Nature ハイライト

遺伝:菌根菌からわかる「変化は人生の薬味」

Nature 433, 7022

太古から存在する菌類の一種が、なかなかおもしろい遺伝的トリックを隠しもっていることがわかった。この菌はゲノムを複数種持っているのである。植物の栄養摂取を助ける「アーバスキュラー菌根菌」の1種であるGlomus etunicatumの塩基配列の研究から明らかになった。 この菌の持つ複数の細胞核では、いくつかの遺伝子の塩基配列が核によって異なることをM HijriとI R Sandersが報告している。これはPLS1と呼ばれる遺伝子の塩基配列を調べてわかったことだ。以前の研究で、菌の胞子はそれぞれ、13種のわずかに異なる遺伝子型を持つことがわかっており、G. etunicatumのDNA配列は各細胞内で13回反復されているのではないかと考えられていた。 しかし、どうもそうではないらしいとHijriとSandersは今回報告している。彼らは細胞1個あたりのPLS1のコピー数は13個ではなく平均1.88個であることを見出した。これは、異なる塩基配列がそれぞれ別の核中にあって分配されたことを示している。つまり、もっと一般的な生物ではすべての細胞核が同一だが、この場合は必ずしもそうではないということになる。このような複雑なゲノムが世代を重ねながらどのようにして進化してきたのか、その仕組みの解明は次の面白そうな問題だと著者たちは述べている。

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