Nature ハイライト

気候:エアロゾル削減が招く将来の気候温暖化

Nature 435, 7046

 今週号掲載の論文によれば、地球温暖化の影響は、結局は気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最悪の予測よりも深刻なものになるかもしれない。大気中のエアロゾルは、量的にはっきりしないものの地球温暖化をうち消すように働いてきた。そしてこの温暖化を「防ぐ」働きは、エアロゾルの量を減らし空気をきれいにしようとする取り組みのせいで、将来、弱まってしまうかもしれない。これは、増大しつつある温室効果ガス排出量に対する気候の感度についての我々の理解に極めて不確かな要素を持ち込むことになる。  IPCCの報告書の予測では、気候感度、つまり大気中の二酸化炭素の倍増による地球全体の気温の平均的上昇は1.5℃から4.5℃程度と広がっていて、真の気候感度の範囲をこれ以上しぼりこむことは困難である。その理由として特にあげられるのが、エアロゾルが及ぼす気候強制力についての理解がまだ不完全だという点である。  M Andreaeらはこの重要な問題を、慎重に単純化した手法を用いてできるだけ定量的に追求し、気候感度が現在最も妥当と考えられている範囲内に収まるのはエアロゾルの強制力、つまり影響が現在の気候モデルで予測されているよりもかなり小さい場合のみであることを見出している。また、エアロゾルの強制力について現在の予測幅の中央となる値を使った際に算出される気候感度を用いた場合、最も楽観的な排出シナリオ以外では全て、2100年までに気温上昇が6℃を上回ることもわかった。 彼らの解析は、21世紀中の気候変化がIPCCの現在の見積もりの上限値に沿って推移し、ことによるとそれを上回る可能性さえあることを示唆している。気候がここまで変化するというのは我々の経験や科学的な知識の範囲をはるかに超えたものなので、その結果地球が将来どうなるのかは予測することもできないと、著者たちはつけ加えている。

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