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Cover Story:熱源を追う:吸血コウモリの独特な赤外線検出装置が獲物の温血動物の位置を知る仕組み

Nature 476, 7358

熱源を追う:吸血コウモリの独特な赤外線検出装置が獲物の温血動物の位置を知る仕組み
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Credit: Dr. Pascual Soriano

表紙は、メキシコで撮影された、飛翔中のナミチスイコウモリ(Desmodus rotundus)である。血液を餌とするこうした吸血コウモリは、獲物となる温血動物の体の高温部分を知るために、赤外線(IR)放射を感知する能力を進化させてきた。他の脊椎動物系列でこのような「第六感」を持つのは、分類学的には互いにかなり離れた関係にある3種類のヘビ(マムシ、ニシキヘビ、ボア)だけである。いずれの場合もIRセンサーは顔にあって、ピット器官と呼ばれる高度に特殊化した構造である。ヘビでは、非温度感受性イオンチャネル(脊椎動物TRPA1)が、赤外線センサーに進化している。今週号に報告されているように、吸血コウモリではこれとは少し異なる分子機構が使われていて、RNAスプライシングによって、広く存在する感受性チャネルTRPV1よりも低い温度を感知するように調整された変種が作り出されている。このチャネル遺伝子の塩基配列と他の哺乳類での対応遺伝子との比較によって、吸血コウモリの進化上の分類は、従来の解剖学的基準に基づいて考えられていたようにヒトやサル、齧歯類と同じ仲間(真主齧上目)に属するのではなく、ウマ、イヌ、ウシ、モグラ、イルカなどと同じ仲間(ローラシア獣上目)であるとする、分子データに基づく説が裏付けられた(Letter p.88, N&V p.40)。

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