Nature ハイライト

細胞:幹細胞の状態を制御するメディエーターとコヒーシン

Nature 467, 7314

胚性幹細胞の状態の制御についてはまだ十分にわかっていないが、ヒトの発生過程の理解や再生医療の進歩のためには、その解明が非常に重要である。幹細胞に多能性をもたらす遺伝子発現プログラムは、Oct4、Sox2、Nanogなどの転写因子群によって制御されていて、その過程では、エンハンサーに結合した転写因子とコアプロモーターのところにできた転写装置との間でDNAループが形成されて遺伝子が活性化されると考えられている。今回、胚性幹細胞では活性遺伝子のコアプロモーターとエンハンサーをメディエーターとコヒーシンがつないでいて、各細胞の遺伝子発現プログラムと結びついた、細胞型特異的なDNAループが形成されていることが明らかになった。これらの結果から、メディエーターとコヒーシンの変異によって生じる病気(Opitz-Kaveggia症候群、Lujan症候群、統合失調症、コルネリア・デ・ランゲ症候群など)に、これらのタンパク質複合体によって生じる細胞型特異的クロマチン構造の異常が関係していることが示唆される。

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