Nature ハイライト

Cover Story:科学は世界中に食糧を供給できるようになるか

Nature 466, 7306

国連の食糧農業機関は、世界の農業生産量は2050年までに70%増やす必要があると見積もっている。今週号では、この目標達成に向けて植物科学やバイオテクノロジー分野でどのようなことができるかを考察した特集を掲載している。この問題の範囲はp.546にまとめられているが、その中には、現在10億人以上の人々が飢えに苦しんでいるのは、食糧が十分にないからではなく、貧し過ぎて食糧を買えないからだという事実も含まれている。だから、我々にはもっとよい食糧管理方式が必要なのだ。だが、表紙に掲げた問いに対してイエスと答えられるようにするには、研究者たちが持続可能なやり方での農業生産高増大に大きくかかわることが必要だろう。N Gilbertが報告しているように、大手の農業バイテク企業は既に、農薬や除草剤耐性の問題から、干ばつや栄養不足に対処できる農作物の開発へと軸足を置き換え始めている(p.548)。1940年代以降の「緑の革命」の原動力となった高収量品種は、例えば穀物粒をより多く、茎をより少なくすることに力を注ぐというように、地上部の特性を最適化しようとするものだった。V Gewinが概説しているように、第二の「緑の革命」を起こそうと手探りしている植物育種や遺伝子操作の研究の多くは今、肥料の使用などの土地への投入物の減少に重点を置きながら、もっと低いところ、つまり「根」に狙いを定めつつある(p.552)。J Tollefsonは、ブラジルは、森林伐採の速度が低下しつつあるまさに今、急速に世界有数の農業生産国になりつつあることを見いだした(p.554)。一方、もし農業の持続可能性を実現しようとするなら、さまざまな農法の及ぼす影響についてもっと知る必要がある。Opinionでは、食の安全性確保の専門家たちが、欠けているデータを収集するための世界規模の監視ネットワークを提案しており(p.558)、またI Potrykusは、ビタミンA欠乏に対応するためのイネを作出する「ゴールデンライス」計画での自身の経験から、遺伝子組み換え作物によって数百万人が飢餓から救われるのを、必要のない法規制が阻んでいると述べている(p.561)。関連のEditorial(p.531, www.nature.com/podcast)もご覧いただきたい。

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