Nature ハイライト

医学:宿主と細菌の相互作用

Nature 461, 7268

今週号の2つの論文は、腸内細菌と宿主の相互作用の研究の重要性をはっきりと示している。最近、腸内の「友好的」微生物の生産物が炎症性疾患や1型糖尿病を抑制することを示す証拠が得られた。また、大腸にいる共生細菌が食物繊維を発酵させて短鎖脂肪酸を作ることは知られているが、今回大腸炎のマウスモデルを使った研究で、こうした脂肪酸が、好中球の化学誘引物質受容体GPR43を刺激して、自然免疫応答と炎症反応を抑制することが明らかにされた。これによって、短鎖脂肪酸とGPR43の相互作用が免疫応答を操作するための標的にできることがわかった(p.1282)。もう1つの論文では、オメガ3脂肪酸由来の化合物で局所的に作用するリゾルビンが、消炎作用のメディエーターであることが明らかにされている。腹部敗血症のマウスモデルでの実験により、リゾルビンD2(RvD2)が炎症部位への好中球の移動を妨げ、白血球と内皮細胞との相互作用を低下させることが示された。RvD2の作用の結果、生存率が著しく上昇する。この知見は、RvD2が強力な抗炎症剤であることを示しており、宿主の免疫系に悪影響を与えない新しい治療法を示唆している(p.1287)。

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