Nature ハイライト

Cover Story:近づく気候危機

Nature 458, 7242

気候の状況は考えられているより悪いのかもしれない。今週号の3つのNews Featureは、実際そうであるか、もしくはそうなる可能性があるとしている。まず最初に、二酸化炭素の排出量削減が予想より難しいことを示す証拠が挙げられている(p.1091)。このことは、我々が大気中から物理的に二酸化炭素を抽出するような事態に陥るかもしれないことを意味しているのだろうか。では、どのようにしたらそれができるのか、検討してみよう(p.1094)。そして、最後の頼みの綱は地球を人為的に冷却するという方法だ。これはうまく行くかもしれないが、あくまで「可能性がある」にすぎない(p.1097)。研究の最前線での重大な疑問の1つは、危険な気候変動を避けようとするなら、温室効果ガスの排出量をどのくらい急いで削減する必要があるかというものだ。今週号では、2本の論文が異なる見地からこの問題に取り組み、おおむね似通った結論に達している。Meinshausenたちは、2050年までの温室効果ガスの累積排出量が、産業革命以前の気温を2 °C上回る地球温暖化の確率と結びつくとしている。2 °C上昇という数字は、危険な気候変動の閾値として広く採用されている。Meinshausenたちは、2 °Cを超える温暖化を2100年まで回避しようとするなら、経済的に採掘可能な石油、ガス、石炭埋蔵量のおよそ3分の1しか燃焼できないことを明らかにしている。この化石燃料の量は、現在の消費ペースでは、2029年までに燃やし尽くされてしまう値である(p.1158)。Allenたちは、気候と炭素循環の結合モデルを用いて、既に観察されている変動と一致するさまざまな気候の将来像をシミュレートしている。1750年以降大気中に放出された人為起源炭素は最近5000億トンに達し、Allenたちは、全体で1兆トンとなる炭素放出によって、「安全範囲」の2 °C上昇を上回る急激な温暖化が引き起こされる可能性が高いことを明らかにした。それ以降に排出される炭素1トンごとに、温暖化の極大値が予測可能な形で増大し、これは排出の時期には関係がない。したがって、有効な気候変動緩和戦略は、二酸化炭素の累積排出量の上限値を達成できるものでなければならない(p.1163)。News and Views(p.1117)ではG SchmidtとD Archerが、排出目標に関する最近のいろいろな研究について考察している。CommentaryではParry たちが、もし各国政府が厳しい温室効果ガス排出目標設定に同意したとしても、どっちみち目標は達成できないだろうというところから話を始めている。そして、避けられない気候悪化に対処する政策のために、さらに多くの資源が使われることになるのだ(p.1102)。S SchneiderはEssayで、二酸化炭素濃度が2100年までに産業革命以前の値の2倍になるという、最悪のシナリオに至る「破滅への道」を我々に見せてくれる(p.1104)。 今回の「気候特集」の詳しい内容については、Editorial(p.1077)を参照されたい。

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