Nature ハイライト

医学:細胞生存機構解明の糸口となるタンパク質

Nature 431, 7004

神経の成長を誘導する役割でよく知られているタンパク質が、結腸直腸癌にもかかわっていることがわかった。ネトリン-1が、マウスの腸で腫瘍の成長を促進することが実証されたのである。この発見は、結腸直腸癌の発生の解明に役立つだろう。P Mehlenたちがマウスを遺伝子操作して、腸の内壁の一部でネトリン-1を発現させたところ、多数のマウスで腸に前癌性の増殖が自発的に起こった。この変異や結腸直腸癌でよく観察されるもう1種類の変異をマウスに導入すると、癌の進行が速まった。 ネトリン-1は、複数種の細胞表面受容体に結合するが、その1つは、細胞死を誘導することによってヒトの結腸直腸癌で癌抑制因子として働いていると考えられてきた。今回の研究で、ネトリン-1がある受容体に結合すると、この細胞死シグナルが破壊されて癌細胞が生き残ることがわかり、ネトリン-1受容体が条件的な癌抑制因子であることが証明された。 「癌研究の分野はこれ以上の進展が難しいところにまで達していて、びっくりするような新しい結果が出ることはないと事情通は思っているかもしれないが、ネトリン-1についてのこの研究が示すように、癌について思いがけない手がかりが得られることはまだ起こり得る」とE R FearonとK R ChoがNews and Viewsで述べている。

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