Nature ハイライト

腫瘍:がんの大規模ゲノミクス研究

Nature 455, 7216

がんに関係する変異の目録を作る大規模なゲノミクスプロジェクトであるがんゲノムアトラスから、結果が出始めた。このプロジェクトの最初の対象となったのは、最もよくみられる脳腫瘍であるグリオブラストーマ(神経膠芽腫)であり、初めての成果は9月4日に電子版で、そして今回印刷版で発表された。グリオブラストーマと密接な関係があることが新たに明らかにされた遺伝子には、腫瘍抑制因子であるNF1RB1ATMAPC、および数種のチロシンキナーゼ遺伝子が含まれる(Article p.1061)。グリオブラストーマは治療抵抗性が極めて高いことから、有望なモデル系の開発が重要となる。Zhengたちは、腫瘍抑制因子p53とPTENを欠損するマウスでは、ヒトのグリオブラストーマに似た、Mycタンパク質の増加を伴う腫瘍が発生することを報告している。このことは、治療方法の検証に使えそうな実験系が見つかったというだけでなく、c-Mycが薬物標的となる可能性も示している(Letter p.1129)。もう1つ別の大規模なゲノム研究では、がん死亡者数の第一位を占める肺がんに関連する変異が、原発腫瘍の188検体で調べられた。肺腺がんとの関連が知られているか、あるいはこの病気に関連する可能性がある600個以上の遺伝子の塩基配列が解読され、そのうち26個の遺伝子で高頻度に変異が認められたことから、これらの遺伝子が発がんに直接関与していることが示唆された(Article p.1069)。

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