Nature ハイライト

Cover Story:マラリア原虫:プラスモディウム属原虫の新しいゲノム塩基配列解読から始まる比較ゲノミクス

Nature 455, 7214

原生動物であるプラスモディウム属(Plasmodium)でヒトに感染することが知られているのは、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、四日熱マラリア原虫(P. malariae)、および卵形マラリア原虫(P. ovale)の4種である。ヒトで最も重症のマラリアを引き起こす熱帯熱マラリア原虫のゲノムは2002年に、これを媒介するハマダラカ(Anopheles gambiae)のゲノムと同時に、全塩基配列が解読された。マラリア原虫の特集である今週号には、これに続く2種の原虫のゲノム配列が発表されている。三日熱マラリア原虫は、熱帯熱マラリア原虫とは異なって致命的な病気を引き起こすことは通常少ないものの、ヒト感染者数の大きな部分を占めている。これまであまり注目されたことのないこの原虫のゲノムは、他のプラスモディウム属原虫のゲノムとの比較解析結果とともに報告されている。表紙の顕微鏡写真(E CalerおよびJ Carltonによる)は、休眠体として潜伏中の三日熱マラリア原虫を含む感染肝細胞である(Article p.757)。もう1つのPlasmodium knowlesiは長い間、サルに感染するマラリア原虫と見なされていたが、ヒトに感染する5番目のプラスモディウム属原虫と認められるようになってきている。特に東南アジアではこの感染が多いが、ヒトに感染する別種の四日熱マラリア原虫と誤診されることが多かった。P. knowlesiは、霊長類系であるためにワクチン作製に有用であるばかりではなく、in vitroで培養して遺伝子導入やノックアウトを効率よく行えるという点でモデル生物として抜きんでて重要である(Letter p.799)。また、Review Articleでは、ゲノム配列を使うことで進展すると思われるマラリア原虫の基礎的な生物学的性質の解明、特に熱帯熱マラリア原虫感染に対する合理的な治療法の開発の研究について、E Winzelerが考察している(Review Article p.751)。Editorialもまた、ご覧いただきたい(p.707)。

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