Nature ハイライト

物理:極限での測定

Nature 452, 7188

Erezたちは、熱力学の第2法則にも、熱は常に熱い側から冷たい側へと流れるという常識にも頼ることができない、これまで調べられたことのない量子力学的状況のふるまいを予測するという未知の領域について報告している。同時掲載のNews and Viewsではマックスウェルの悪魔の量子版になぞらえられているこの量子測定過程は、熱力学的ふるまいを支配しているらしい。検討された系は2つのエネルギー準位が「熱浴」に囲まれた形で、熱浴は任意の量の熱を供給したり吸収したりできる。このような2準位量子系では、測定を行う行為によって、緩和が減速する(ゼノ効果、この場合連続的に観測されている不安定粒子は崩壊することがない)、あるいは加速する(反ゼノ効果)ようになる。反ゼノ効果にはこの系と熱浴のエントロピー減少と温度低下が伴い、ゼノ効果では加熱とより高いエントロピーが生じる。そして、この種のふるまいによって標準的な熱力学の法則が破綻する。実用面についてみると、これらの異常なふるまいから、量子系における熱とエントロピーの極めて高速な制御が可能になるかもしれない。

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