Nature ハイライト

医学:肥満が複雑になってきた

Nature 452, 7186

ヒトの多因子疾患は、多くの遺伝的、環境的要因の相互作用により発症する。こうした疾患の1つである肥満に関与する要因の全体像をつかむために、18歳から85歳までのアイスランド人数百人の遺伝子発現を、被験者から採取した血液と脂肪組織検体における量的形質として評価した。その結果、肥満度指数(BMI)の高い人では、脂肪組織での遺伝子活性化に特徴的なパターンがみられる傾向があるが、血液ではパターンがさほどはっきりしないことが明らかになった。今回の脂肪組織データから構築された転写ネットワークは、マウスの脂肪組織データをもとにしたネットワークとかなり重なり合った(Article p.423)。また、マウスを用いた研究から、多因子疾患は遺伝子と環境の影響を受けた分子ネットワークの創発特性(部分の性質の総和を超えた全体の性質)であるという説を支持する実験結果が得られた。マウスを用い、肥満、糖尿病、およびアテローム性動脈硬化に関連する代謝形質と相関する遺伝子発現ネットワークの乱れが調べられ、今まで肥満遺伝子であることが知られていなかったLplLactbPpm1lの3つが同定された。この「分子ネットワーク」を使う研究からは、治療は1個か2個の特定遺伝子に対してではなく、「病因ネットワーク」全体に対して行った方がよさそうだと予測される(Article p.429, Author page)。

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