Nature ハイライト

化学:マクスウェルの悪魔とはり合う

Nature 445, 7127

J Cマクスウェルは、1867年に行った古典的な思考実験で、気体で満たされた2つの区画を仕切るトラップドアを見張る小さな悪魔を想定した。その悪魔が、速く動く分子だけを左から右へ通し、遅く動く分子は右から左へ通すので、その結果、右の区画が暖まり左の区画が冷たくなる。このように平衡から遠ざかる変化は、熱力学第2法則に反している。マクスウェルの生誕地に程近いエディンバラ大学のチームが今回、マクスウェルの悪魔が平衡と闘うのを模倣した分子「機械」を作り出した。この「新型の悪魔」にあたる分子は、特別に設計したロタキサンである。このロタキサンは、環状分子に対する複数の結合サイトをもつ中心軸が環状分子の中心の環を貫通した構造をしている。以前のロタキサンマシンは、環の結合パターンを変化させることによって活性化されるため、結合サイト間で環が行き来する結果となり、平衡に戻る方向に系を動かした。新しいロタキサンでは、環の位置に関する情報を使って平衡から離れる方向へ系を動かしている。しかし、分子情報を集めて移動させるのにエネルギー(光として供給される)を消費するため、熱力学第2法則は破られないままとなる。

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