Nature ハイライト

Cover Story:先史時代のペスト:古代DNAから、狩猟採集民の間で起きた致死的な感染症のアウトブレイクが明らかになった

Nature 654, 8119

ウスチ・イダ遺跡の墓地にペストの犠牲者と共に埋葬されていた、9〜11歳の女児の頭蓋骨。
ウスチ・イダ遺跡の墓地にペストの犠牲者と共に埋葬されていた、9〜11歳の女児の頭蓋骨。 | 拡大する

Angela Lieverse

ペストは、歴史上最も致死的ないくつかの疾患アウトブレイクを引き起こしたことで広く知られている。しかし、ペストの起源、そしてペストが初期の人類集団にどのような影響を及ぼしたのかは、いまだよく分かっていない。特に、ペストの原因菌であるペスト菌(Yersinia pestis)のこれまでに発見された古代株には、病原性に必要とされる古典的な遺伝子が欠けており、このためこの疾患の初期の形態がどれほど致死的だったのかという疑問が生じていた。今週号ではE Willerslevたちが、約5500年前までさかのぼる先史時代のコミュニティーにおける致死的なペストのアウトブレイク(集団発生)の証拠を明らかにしている。著者たちは、シベリア南東部に埋葬されていた42人の狩猟採集民の遺骸から得られたDNAを解析した。その結果、18個体でペスト菌の証拠が見つかり、さらにそれらの個体が近縁の家族集団に属していたことが示された。これは、ヒトからヒトへの伝播が起きていたことと矛盾しない。ペスト菌のこの株は、他の既知の古代株および現代株とは異なっており、研究チームは、この株が少なくとも5700年前に出現したと推定している。これらの結果は、ペストの致死的なアウトブレイクが、新石器時代の集団で確認される数百年も前に、狩猟採集民集団の内部で起きていたことを示唆している。著者たちは、この結果が、高い人口密度と農耕への移行がペスト流行の前提条件だったという考えに異議を唱えるものだと述べている。

2026年6月18日号の Nature ハイライト

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