Nature ハイライト
Cover Story:先史時代のペスト:古代DNAから、狩猟採集民の間で起きた致死的な感染症のアウトブレイクが明らかになった
Nature 654, 8119
Angela Lieverse
ペストは、歴史上最も致死的ないくつかの疾患アウトブレイクを引き起こしたことで広く知られている。しかし、ペストの起源、そしてペストが初期の人類集団にどのような影響を及ぼしたのかは、いまだよく分かっていない。特に、ペストの原因菌であるペスト菌(Yersinia pestis)のこれまでに発見された古代株には、病原性に必要とされる古典的な遺伝子が欠けており、このためこの疾患の初期の形態がどれほど致死的だったのかという疑問が生じていた。今週号ではE Willerslevたちが、約5500年前までさかのぼる先史時代のコミュニティーにおける致死的なペストのアウトブレイク(集団発生)の証拠を明らかにしている。著者たちは、シベリア南東部に埋葬されていた42人の狩猟採集民の遺骸から得られたDNAを解析した。その結果、18個体でペスト菌の証拠が見つかり、さらにそれらの個体が近縁の家族集団に属していたことが示された。これは、ヒトからヒトへの伝播が起きていたことと矛盾しない。ペスト菌のこの株は、他の既知の古代株および現代株とは異なっており、研究チームは、この株が少なくとも5700年前に出現したと推定している。これらの結果は、ペストの致死的なアウトブレイクが、新石器時代の集団で確認される数百年も前に、狩猟採集民集団の内部で起きていたことを示唆している。著者たちは、この結果が、高い人口密度と農耕への移行がペスト流行の前提条件だったという考えに異議を唱えるものだと述べている。
2026年6月18日号の Nature ハイライト
天文学:惑星と同一平面上を周回する褐色矮星
原子核物理学:原子核殻構造に支配される短距離核子対形成
原子干渉法:次世代長基線原子干渉計に向けた一歩
エレクトロニクス:シリコントランジスターのモノリシック三次元集積化
ペロブスカイト太陽電池:配位子の立体電子的操作によるペロブスカイト太陽電池の安定性向上
生物工学:化学的および生物学的複合プラットフォームによるバイオマスの高付加価値化
気候科学:地球のアルベドの東西対称性
生態学:花粉媒介昆虫が小規模農家の健康と生計を支えている
進化学:ミツバチの王台を作る専任のワーカー
神経科学:麻酔下でも患者には聞こえている
神経科学:ミエリン鞘形成の極意
神経発生:神経堤細胞の多くは剝離前に運命が制限されている
ヒトの発生:ヒト胚での器官発生の時空間的な転写動態
ウイルス学:オミクロン株による広域中和抗体回避の克服
微生物学:mRNAを標的にする抗CRISPRタンパク質
免疫学:サルで実証されたHIV広域中和抗体の誘導
がん:膵臓がんにおける抗ネトリン抗体併用の効果
生物工学:ゲノム編集で大きなDNA断片を効率良く正確に挿入できる新しい方法
タンパク質データベース:ゲノムの「暗黒物質」から作られる「ペプチダイン」

