Nature ハイライト
Cover Story:細胞療法の進展:パーキンソン病の再生治療の安全性が治験で確認された
Nature 641, 8064
パーキンソン病は、神経伝達物質であるドーパミンを産生するニューロンが徐々に失われることを特徴とする疾患である。現行の治療法は疾患初期の症状を軽減できるものの、時間とともに効果が低下する。有望な治療法の1つは、ドーパミン産生ニューロンの数を補充するのを助ける細胞を脳内に直接移植する手法である。今週号では、高橋淳(京都大学)たちとV Tabarたちが、そうした治療法の安全性を確認するためにそれぞれ独立に行った臨床試験の有望な結果を報告している。高橋たちはヒト誘導多能性幹(iPS)細胞由来のドーパミン前駆細胞を、Tabarたちはヒト胚性幹(ES)細胞由来のドーパミン前駆細胞を用いている。いずれの試験も期待の持てる結果が得られており、治療による深刻な有害事象は報告されず、この手法が安全であることが示唆された。また、効果についてもいくらかの兆候は観察されたものの、真の有効性を評価するにはより大規模な試験が必要である。表紙は、脳内に移植されたドーパミン産生ニューロン(金色)の想像図である。
2025年5月22日号の Nature ハイライト
天文学:初期宇宙の銀河の棒状構造によるガスの流入
天文学:近接連星系内にある逆行惑星
原子物理学:陽子を運ぶ
量子コンピューティング:フォトニック量子コンピューティング用のシリコンモジュール
量子光学:低次元系における真空場の効果
量子物理学:3サイトキタエフ鎖の実現とエッジ/バルク状態の観測
物性物理学:ツイスト3層グラフェンにおけるモアレ格子
物性物理学:固体水素の超高圧結晶構造
環境科学:プラネタリーバウンダリー内での世界の発展の道筋
生態学:暗黒多様性で見る自然植生の現状
進化遺伝学:古代DNAで探るマグリブ東部の集団史
遺伝学:複雑な形質に関連する細胞の空間マッピング
神経科学:セロトニンの役割の新たな理解
神経科学:感覚学習における高次機能の分離
免疫学:mRNAワクチン効果を増強する代謝機構
生物工学:肺繊維化の解消を促進する繊維芽細胞
免疫学:肝再生のグルタミン酸を介した時空間的な調節
細胞生物学:マルチオミクス解析によって解明された細胞タイプ特異的な核区画
分子生物学:ROSの働きを利用するがん治療薬の効果を妨げるレトロマー複合体