Nature ハイライト

生態:温暖化に繁殖時期を合わせられない渡り鳥

Nature 441, 7089

気候変動の影響で鳥の繁殖時期が餌の少ない時期にあたってしまい、個体数の減少が起きていることが今週号に報告されている。渡りを行うマダラヒタキ(Ficedula hypoleuca)での調査によると、餌になる側の生物種と捕食する側の鳥類種の間で、温暖化に対する適応度合いに差がある場合、鳥の個体数が大きく減少するのだという。  マダラヒタキは長距離の渡りをする鳥である。オランダで春の繁殖期を過ごし、そこでヒナの餌の大部分をチョウやガなどの幼虫でまかなう。C Bothたちは今回、温暖化によってそうした幼虫の個体数のピークが早まることで、マダラヒタキに及ぶ影響を調べた。すると過去20年で、餌の量がピークに達するのが最も遅い地区でのマダラヒタキの個体数減少がおよそ10%だったのに比べて、餌量のピークが最も早く現れる地区ではおよそ90%の減少がみられた。個体数のこの減少は、マダラヒタキが餌の乏しい時期に繁殖するためだとBothたちは考えている。  Bothたちによると、このタイミングのずれは、マダラヒタキが渡りの時期を厳格に守って温暖化に適応できずにいるために生じる。また、長距離の渡りや移動をするほかの動物の個体数も、同じような影響を受けている可能性がある。

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