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細胞生物学:ケーブルと雲と彗星によるミトコンドリアの分配

Nature 591, 7851

ミトコンドリアのイメージ画像。
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Credit: SCIEPRO/SCIENCE PHOTO LIBRARY / Science Photo Library / Getty Images

細胞分裂の際に核ゲノムが2個の娘細胞に分配される仕組みについては、多くが解明されている。しかし、それ以外の細胞成分、例えば小胞体やミトコンドリアのような細胞小器官についてはどうなっているのか。今回E Holzbaurたちは、細胞の有糸分裂の際にミトコンドリアがどのように組織化され分配されるのか、その仕組みを調べている。まず、アクチン細胞骨格の複数の集合体が、ミトコンドリアを確実に均等かつランダムに分配するための、それぞれ異なっているが相補的な役割を担っていることが分かった。アクチンでできたケーブル(アクチンフィラメント束)が、細胞質全体にわたって網目状に張り巡らされ、ミトコンドリアが量的に均等に2個の娘細胞へ確実に分配されるように、その配置を調整していることが分かった。また、ミトコンドリア表面ではアクチンフィラメントが波のような動き方をしていることも明らかになった。この波によって対称性が破れると、そこに結合していたミトコンドリアがアクチンの雲に包み込まれる。次にこの雲が、長く伸びたコメットテイルの形(彗星の尾に似た構造)に変化し、これがミトコンドリアを一気に動かして、母細胞中のミトコンドリアをシャッフルするので、健常なミトコンドリアと損傷のあるミトコンドリアが2個の娘細胞にランダムに受け継がれる。

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