Research Press Release
【視力】光を分けて視力を高めるミュラー細胞
Nature Communications
2014年7月9日
網膜内で光を誘導する特殊な細胞であるミュラー細胞が、光を分けて、異なる波長の光を桿体細胞と錐体細胞に当てていることが分かった。これは、夜間視力を損なわずに昼間視力を向上させる作用だと考えられている。この研究結果を報告する論文が、今週掲載される。
ヒトの網膜は、逆向きの構成になっており、光を感知する視細胞は、他の細胞の下に埋め込まれて、光の経路の最初の細胞としてではなく、最後の細胞となっている。網膜内のミュラー細胞は、光路として作用し、網膜の中を視細胞に向かって光を伝えるが、これによって視力がどのような影響を受けるのかは分かっていない。
今回、Perlmanたちは、網膜の観察によって裏付けられたコンピューターモデルを用いて、ミュラー細胞が漏斗のように作用して、赤から緑の波長の光を錐体細胞(日中において最も重要な光感知細胞)に当て、それを取り巻く桿体細胞には夜間色として最も一般的な青から紫の波長の光を当てることを明らかにした。
ヒトの眼は、日中は、光を集めて、それを検出できる錐体細胞に当てる。光度が低く、桿体細胞の方が重要な役割を果たす夜間には、ミュラー細胞が上述したような光の伝え方をするので、青色の波長の光をできるだけ多く集めているのだ。
doi:10.1038/ncomms5319
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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