Research Press Release

天文学:高赤方偏移の「小さな赤い点」におけるブラックホール質量の直接測定

Nature

2026年5月28日

宇宙の年齢がわずか7億年だった時代の銀河で見つかった「小さな赤い点(little red dot)」と呼ばれる遠方の天体におけるブラックホールの質量の直接測定結果を報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。この発見は、一部のブラックホールが、その宿主銀河の恒星よりも先に形成・成長する可能性があることを示しており、ブラックホール進化の初期段階に関する知見をもたらすものである。

天文学者たちは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST:James Webb Space Telescope)を用いた初期の実験で検出された「小さな赤い点」群の正体について議論を重ねてきた。これまでの研究では、「小さな赤い点」は超大質量ブラックホールであるとの見方が示されていたが、既存のモデルではそれらのブラックホールの質量が過大評価されていた可能性がある。

Ignas Juodžbalisら(ケンブリッジ大学〔英国〕)は、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって検出され、ブラックホールを宿す「小さな赤い点」に分類された天体「Abell2744-QSO1」を分析した。観測結果から、ブラックホールからの距離ごとにガスの回転速度が明らかになり、重力加速度の大きさに関する情報が得られた。これにより、著者らはこの「小さな赤い点」が宿すブラックホールの質量が太陽質量の5000万倍であると推定した。宿主銀河に含まれる恒星質量はきわめて少ない(ブラックホールの質量の半分以下である)ことから、このブラックホールは形成の初期段階にあり、宿主銀河よりも先に形成が始まった可能性が示唆される。

この発見は、宇宙のこのような初期段階におけるブラックホールの質量に関する、初の直接測定結果の一つとなる。著者らは、モデルと分析を精緻化するためにはさらなる研究が必要であると指摘している。

Juodžbalis, I., Marconcini, C., D’Eugenio, F. et al. A direct black-hole mass measurement in a little red dot at high redshift. Nature 653, 1017–1021 (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10579-4
 

 

doi:10.1038/s41586-026-10579-4

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