Research Press Release
胆嚢がんのゲノム塩基配列解析で重要な変異が同定される
Nature Genetics
2014年7月7日
中国人患者から採取した胆嚢がんの検体を用いて遺伝子配列の解読と解析が行われた。その結果は、胆嚢がん患者の約3分の1にとって有効な新しい標的療法の開発につながる可能性があると考えられている。この結果を報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。
胆嚢がんは、まれに発生する致命的ながんであり、東アジア人と北インド人の発症率が特に高い。また、胆石症や慢性炎症の患者は、胆嚢がんのリスクが高い。
今回、Yingbin Liuたちは、57点の胆嚢がん検体を中国人患者から採取し、検体中の遺伝子変異を調べた。その結果、検体の約37%において、重要な細胞増殖・生存経路であるErbBシグナル伝達経路の複数の遺伝子が変異しており、それが予後不良と結びついていることが判明した。さらに、これらの遺伝子が胆嚢がんに及ぼす影響に関する検証が実験室内で行われ、ErbBシグナル伝達経路の遺伝子であるERBB3の変異体と正常なERBB2が同時に活性化している場合に、がん細胞の増殖速度がかなり上昇し、侵襲性の強いがんとの整合性を示した。
ErbBシグナル伝達経路の遺伝子を阻害する薬は既に開発されており、現在、上述の場合と類似した変異を有する他の種類のがんで試験が行われている。
doi:10.1038/ng.3030
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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