【気候】温暖化で得したペンギンと損したペンギン
Scientific Reports
2014年6月12日
南極のペンギンは、過去の気候温暖化から恩恵を得てきたが、最近、一部のペンギンが大きな不利益を受け始めていることが明らかになった。今回の研究では、過去の気候変動に対する南極ペンギンの数々の応答と最近の傾向を比較して、自然の気候変化と人為的気候変動の影響の切り分けを行った。その詳細を報告する論文が、今週掲載される。
気候変動は、生物多様性を脅かしており、「勝ち組」(気候変動から恩恵を受けている生物種)と「負け組」(個体数が減少し、あるいは絶滅した生物種)を生み出している。今回、Gemma Clucasたちは、DNA塩基配列解読法を用いて、アデリーペンギン属の3種のペンギン(ジェンツーペンギン、ヒゲペンギン、アデリーペンギン)の個体数の推移と個体群構造を評価した。その結果、3種全てが、最終氷期極大期(LGM)以後の気候温暖化に正の応答をして、生息域を広げたことが明らかになった。ところが、最近の傾向からは、広食性の高いジェンツーペンギンが現在の気候変動から恩恵を受け、生息域を広げ、個体数を増やしたのに対して、アデリーペンギンとヒゲペンギンは「運命の逆転」に遭遇し、南極半島での個体数が減り、LGM以後の応答と正反対になっていることが示唆されている。
このようにアデリーペンギンとヒゲペンギンの運命が逆転した理由と考えられるのが、食料源として依存していたナンキョクオキアミの個体数減少だ。これに対して、ジェンツーペンギンの場合には、食餌の多様性が高く、ナンキョクオキアミの減少に対する感受性が低い。Clucasたちは、過去の気候変化の正常な範囲に人為的影響が加わったことで、ペンギンの個体群の応答が過去の応答とは異なったものになる可能性が、今回の研究結果によって示されたと主張している。
doi:10.1038/srep05024
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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