Research Press Release

明晰夢をもたらすγ帯神経活動

Nature Neuroscience

2014年5月12日

脳の前頭野と側頭野に特定周波数で温和な電流を送ると、明晰夢という、夢を見ながらそれと気付いている状態を誘導できるかもしれないとの研究が、今週のオンライン版に報告されている。

睡眠のうち急速眼球運動(レム)相で見る夢では、寝ている人の意識状態は通常、過去の記憶や将来待ち望む事態に触れることはない。これと対照的に明晰夢は、寝ている人が自発的に夢の筋書きを制御できるようにする自己認識や自由意思といった付加的な認知機能を伴う。これまでの研究は明晰夢を脳の前頭野と側頭野におけるγ帯活動の増加に関連付けていたが、この関連についての正確なところは明らかになっていな い。

Ursula Vossたちは、数夜にわたって明晰夢を体験していない27人の被験者から神経活動と夢の詳細を得て評価した。中断のないレム睡眠が3分間続いた被験者には、経頭蓋交流電流刺激(tACS)を前頭野と側頭野の頭蓋領域に施した。この刺激によって、内部の脳領域で神経活動が変化した。 tACSの数秒後、起こされた被験者は見た夢を報告し、明晰夢のさまざまな状況を評価した。40 Hz(より少ない場合は25 Hz程度)の低帯域のγ帯刺激はγ活動を増強し明晰夢を誘導するだけでなく、活動の増強の程度は明晰夢の状況、すなわち夢を見ているという意識や、夢の筋書きの制御、夢の主人公からの解離などと関連していた。今回の発見は、前頭野と側頭野におけるγ帯活動の増加が明晰夢を引き起こしている可能性を示唆している。

doi:10.1038/nn.3719

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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