肥満:食物繊維によって食欲が抑えられる過程
Nature Communications
2014年4月30日
このほど行われたマウスの研究で、腸内で消化された食物繊維から放出された分子が、飢餓状態を制御することが知られた脳領域に作用して、食欲を抑制することが明らかになった。この新知見で、食物繊維を豊富に含んだ食事が「健康に良い」理由の解明が前進する。この研究結果を報告する論文が、今週掲載される。
大部分の欧米の加工食品には精製した砂糖と脂肪が多く含まれているが、発酵性繊維はわずかしか含まれていない。これまでの動物研究では、腸内微生物による食物繊維の発酵によって、食物摂取量全体と体重が減ることが明らかになっているが、これまでのところ、こうした効果の原因は、腸内での食欲抑制ホルモンの分泌だとされてきた。今回、Gary Frostたちは、食物繊維の発酵も脳に対して直接的な食欲抑制作用のあることを明らかにした。つまり、マウスの研究において、腸内微生物による発酵の結果として食物繊維から短鎖脂肪酸の酢酸塩が放出され、蓄積して、飢餓状態を制御する脳領域として知られる視床下部の神経細胞において変換されることが分かったのだ。また、Frostたちは、食物繊維または純粋な酢酸塩をマウスに与える実験で、食物摂取量が急減し、食欲の抑制と一致する脳内での神経活動のパターンが誘導されたことも指摘している。
もし今回の研究結果がヒトにおいて確認されれば、発酵性食物繊維の摂取量を増やすことが、有効な体重管理のための実現可能な戦略である可能性が示唆されることになる。
doi:10.1038/ncomms4611
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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