Research Press Release
がん治療:2段階プロセスで腫瘍を狙い撃つ
Nature Communications
2013年11月6日
薬物をがん組織に選択的に投与するために用いる多用途の化学的標識について報告する論文が、今週掲載される。この標識は、原理的には、さまざまな既存の抗がん剤に結合させ、異なる種類の腫瘍関連酵素による2段階の過程で取り外すことができ、これによって抗がん療法の有効性を高められる可能性がある。
この化学的標識を取り外して薬物を放出するためには、2種類の酵素が必要で、この過程が、主にがん細胞で起こることをNobuhide Uekiたちが報告している。その1つであるヒストンデアセチラーゼは、アセチル基をタンパク質から除去することで遺伝子発現を調節し、腫瘍内で活性化していることが多い。もう1つのカテプシンLは、腫瘍の進行と転移と結びついていると考えられてきた。ヒストンデアセチラーゼによって化学的標識からアセチル基が取り外されると、1つの結合部位が露出し、この結合部位によって、その後にカテプシンLによる切断が起こるのだ。Uekiたちは、大腸がんの動物モデルを用いて、この化学的標識を抗がん剤ピューロマイシンに結合させる実験を行い、標識されたピューロマイシンの方が、標識されていないものよりも腫瘍増殖の阻害効果が高いことを明らかにした。
doi:10.1038/ncomms3735
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
がん:膵臓がんまたは大腸がんの患者において有望な効果を示すワクチンNature Medicine
-
生態学:熱波が熱帯の鳥類の個体数減少と関連しているNature Ecology & Evolution
-
気候変動:ペリト・モレノ氷河の後退が最近大幅に加速Communications Earth & Environment
-
考古学:スペインの洞窟で新石器時代の人肉食の証拠が発見されるScientific Reports
-
気候変動:鉱物資源の不足が低炭素化移行を制限する可能性Nature Climate Change
-
人類の進化:スラウェシ島における初期ホミニンの居住Nature