世界の洪水損害の増加予測
Nature Climate Change
2013年8月19日
世界の沿岸都市部での年間の洪水被害費用は、現在の洪水防護基準のままだと、2050年に少なくとも1兆ドル(約100兆円)に達するという予測が明らかになった。適応対策への投資があれば、2050年時点での年間被害費用は減るが、それでも600~630億ドル(約6~6.3兆円)になると予測されている。
沿岸都市部では、洪水の経済的損害の規模が増大しており、そのことは、気候変動、地盤沈下、人口と資産の増加の予測によって説明できる。今回、Stephane Hallegatteたちは、世界で最大級の沿岸都市圏のうち、136都市圏のデータを調べることによって、洪水損害を定量化した。その結果、社会経済的変化だけによる年間被害費用が2005年の60億米ドル(約6000億円)から2050年の520億ドル(約5兆2000億円)に増加すると推定された。この分析に海面上昇と地盤沈下を加味した場合には、たとえ洪水防護壁(例えば堤防)の整備があっても洪水損害はさらに増えると予測されている。
Hallegatteたちは、被害費用の43%が、わずか4都市(米国のマイアミ、ニューヨーク、ニューオーリンズと中国の広州)に集中し、洪水被害を受ける恐れの大きい都市圏の数が最も多いのが米国である点を強調している。洪水防護対策のさらなる改善が必要とされるが、インフラ整備による適応対策だけでは被害を許容レベル以下に抑えることができず、したがって、防災対策と保険制度の拡充に政策を集中させるべきことが今回の研究で明らかになっている。
doi:10.1038/nclimate1979
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