Research Press Release

考古学:ローマの建築技術に関する明確な証拠

Nature Communications

2025年12月10日

ポンペイ(Pompeii)の建設途中の部屋で見つかった建材が、古代ローマ人がセメントをどう作ったかについて手がかりを与えることを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルNature Communications に掲載される。こうした知見は、何世紀にもわたり建造物を支え続けてきた古代ローマの技術に対する理解を深める。

ローマの建築技術に関する私たちの知識の多くは、文字による記録に依存している。なぜなら、考古学遺跡から発見された道具や原材料は比較的限られており、断片的だからである。従来は、消石灰(加熱した石灰岩に水を混ぜたもの)を多用していたと考えられていた。しかし、最近の研究では「加熱混合(hot mixing)」と呼ばれる手法が指摘されている。これは、生石灰(乾燥した加熱石灰岩)を直接水や火山岩、火山灰と混合する工程である。これにより、化学反応が生じ、混合物が加熱される。この手法の使用を直接裏づける考古学的証拠はまだ発見されていない。

Admir Masicら(マサチューセッツ工科大学〔米国〕)は、この工程を解明するため、ローマ時代の都市ポンペイで最近発掘された部屋を調査した。これらの部屋は、西暦79年の火山活動で都市が放棄された際、建設中だったため、作業員が置き去りにしたコンクリート建材の容器や工具が保存されていた。著者らは生石灰、火山灰、骨材を特定した。これらはすべて「加熱混合」技法の使用を裏づける材料である。さらに、コンクリート打設時の比率を一定に保ち、壁を真っ直ぐで水平に仕上げるために使用された可能性のある重りや測定器具も発見された。著者らは、これらの建築資材の化学組成と微細構造も分析した。現場での生石灰使用と加熱混合技術に直接結びつく、特徴的な分子構造とひび割れと多孔性のパターンを確認したのである。研究者らはこのデータから、ポンペイの労働者が火山活動時に「加熱混合」技術を建設に用いていたと推測している。

本研究は、古代文学、考古学、および材料科学というユニークな組み合わせを活用し、ローマの建築技術に関する理解を深めるものである。得られた知見は、現代の建設プロセスに応用可能であり、より耐久性と持続性に優れたコンクリートの開発が期待されると著者らは述べている。

Vaserman, E., Weaver, J.C., Hayhow, C. et al. An unfinished Pompeian construction site reveals ancient Roman building technology. Nat Commun 16, 10847 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-025-66634-7
 

doi:10.1038/s41467-025-66634-7

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