Research Press Release

遺伝学:14の精神疾患に共通する遺伝的シグナル

Nature

2025年12月11日

うつ病、不安障害、および統合失調症を含む14の精神疾患をスクリーニングした結果、5つの疾患群が遺伝的リスクの大部分を共有していることを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。100万人以上のDNAデータにもとづくこの発見は、診断の精度向上や複数の疾患に効果的な新治療法の開発につながる可能性がある。

精神疾患は、しばしば同時に発生し、遺伝的影響を共有している。そのため、特に診断が根底にある生物学的要因ではなく、症状にもとづいて行われている場合、疾患を明確に区別することが困難であり、診断と治療が難しくなる。精神疾患間の遺伝的関連性を理解することは、診断と治療の改善にとって重要である。

Andrew Grotzingerら(コロラド大学ボルダー校〔米国〕)は、精神疾患を持つ1,056,201人の遺伝子データを分析した。その結果、これらの疾患の遺伝的変異の大部分を説明し、さまざまな疾患群(強迫行動、統合失調症と双極性障害、神経発達障害、うつ病や不安などの内面化障害、および物質使用障害)を結びつける5つの遺伝的要因を発見した。これらの遺伝的特徴は、思考や感情に関与する脳細胞に影響を与えるものなど、何百もの遺伝子領域や生物学的経路に関連していた。

この発見は、共通の遺伝的要因が脳の発達の初期段階で役割を果たしており、精神疾患をより生物学的に理解する方法の確立に役立つ可能性を示唆している。今回の研究は、おもにヨーロッパ系の祖先を持つ人々に焦点を当てているため、今後の研究ではより多様な集団を対象とし、これらの知見が新しい治療法の開発にどのように役立つかを検討する必要がある。

Grotzinger, A.D., Werme, J., Peyrot, W.J. et al. Mapping the genetic landscape across 14 psychiatric disorders. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09820-3

News & Views: Shared genetic risk in psychiatric disorders
https://www.nature.com/articles/d41586-025-03728-8

News: Huge genetic study reveals hidden links between psychiatric conditions
https://www.nature.com/articles/d41586-025-04037-w
 

doi:10.1038/s41586-025-09820-3

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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