Research Press Release
【神経科学】成体になってからの強い不安の原因は胎盤?
Nature Communications
2013年8月7日
哺乳類の仔は、子宮内での発生期に特定のホルモンが欠乏すると、成体になってから、より強く不安を感じることがわかった。この新知見は、情動行動の長期的プログラミングにおける胎盤の役割に関して新たな手がかりをもたらしている。
インスリン様増殖因子2は、哺乳類の胎仔と胎盤の発生で大きな役割を果たすことが明らかになっており、胎盤と胎仔における発現の変化が、子宮内での発育不全に関係すると考えられている。子宮内発育不全は、新生仔の発育に影響することが知られているが、その長期的影響は十分に解明されていない。今回、Lawrence Wilkinsonたちは、胎盤においてのみインスリン様増殖因子2が欠乏していたマウスの成体期の行動を調べた。その結果、このマウスの不安に関連する行動的形質が増強されており、これに伴って、この種の行動に関連する脳の遺伝子発現に特異な変化が見られた。
今回は、マウスを用いた研究だったが、これによって得られた知見は、ヒトの発生にさらに幅広いかかわりをもつ可能性がある。ただし、この新知見が妥当する範囲を判断するには、さらなる研究が必要となる。
doi:10.1038/ncomms3311
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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