ミトコンドリア病をしっかり治療するTALEN
Nature Medicine
2013年8月5日
ミトコンドリアの機能不全が関係する病気と闘うための方法として、ヒト細胞の変異ミトコンドリアDNAを欠失させる特異性の高い方法が開発された。この方法は、一部のミトコンドリア病の患者の恒久的な治療に役立つ可能性がある。
ミトコンドリアはヒトのあらゆる細胞にエネルギーを供給する細胞小器官で、独自のゲノムDNA(mtDNA)をもっている。mtDNAに起こった有害変異が遺伝したり、時とともに蓄積されたりすると、ミトコンドリア機能の低下と病気につながる。こういった病気の恒久的な治療法として、正常なmtDNAを温存しつつ変異mtDNAを選択的に除去する方法の研究が、これまでにも行われている。
この目標をよりうまく達成するために、Carlos Moraesたちは、特異的なTALEN(転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ)を作製した。TALENは、目的とする任意のDNA配列に結合するよう改変できる酵素である。彼らの作ったTALENはミトコンドリアに入り、ヒトの病気に関係する2種類の変異mtDNAを特異的に認識して切断した。次にMoraesたちは、これらの変異をもつ培養ヒト細胞でこのTALENを使うと、変異mtDNA量が減少するとともに、エネルギー生産能力が正常に回復することを明らかにした。
この方法を臨床応用する前に、生体内での検証を行い、他の技術的課題を克服する必要があるが、Moraesたちは、細胞内の変異mtDNAが全部ではなくても大半除去できさえすれば、その細胞もその子孫も「治癒」したことになるので、TALENで生涯にわたって治療する必要はないだろうと述べている。
doi:10.1038/nm.3261
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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