Research Press Release
地球の水循環は何に影響されているのか
Nature Climate Change
2013年7月1日
1950年代から1980年代にかけて全球水循環が衰退した原因は大気中のエアロゾルの増加だったという見解を示す論文が、今週オンライン版に掲載される。温暖化しつつある地球では、降水量と河川流量の増加が予想されるのだが、そのような観測結果が得られていない。この論文によれば、そうした食い違いが1980年代まで続いたのは、人間活動によって大気中の微粒子物質の濃度が高くなっていたからであり、1980年代になって温室効果ガスの濃度が上昇すると、水循環は回復したとされる。
今回、Peili Wuたちは、気候モデルによるシミュレーションを解析し、気候変動が水循環に及ぼす影響を明らかにした。そして、これまでに観測された降水量の傾向は、2つの人為起源の因子(大気中のエアロゾルと温室効果ガス濃度)の影響が組み合わさった結果であることがわかった。
近年、温室効果ガス排出量の増加と大気汚染の減少によって水循環が強化されているが、このことは、現在の傾向が続けば、降水量のさらなる増加を期待できることを示している。
doi:10.1038/nclimate1932
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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