Research Press Release
結核菌の糖組み立てライン
Nature Chemical Biology
2010年3月22日
結核菌Mycobacterium tuberculosisでは、重要な酵素が、これまで知られていなかった多糖類形成経路に関与している。Nature Chemical Biology(電子版)に発表されるその研究成果は、結核の潜在的な新しい薬剤標的をもたらす。
その遺伝子glgEは、M. tuberculosisに不可欠であることが既に示されているが、それに対応する酵素GlgEの生物学的機能は知られていなかった。遺伝学的および生化学的方法により、W Jacobsたちは、自然に生ずる糖化合物からαグルカンという多糖類への転換を行う経路に関与する4種類の酵素を同定した。研究チームは、そのうちの1つ、TreSの不活性化が結核菌にとって致命的でないことを発見し、その経路が増殖に必要なものではないことを示した。しかし、GlgEの不活性化は致命的であり、この酵素の糖基質であるマルトース-1-リン酸が毒性量まで蓄積することとなる。また、別のαグルカン生合成経路の酵素とTreSとを同時に不活性化することは致命的であることがわかり、M. tuberculosisの増殖でαグルカンが担う重要な役割が浮かび上がった。
GlgE経路の生物学的役割に関しては今後の解明が待たれるが、GlgE、およびさらに広くαグルカン経路は、結核感染のin vivoモデルで現在検討することができる薬物標的の候補である。
doi:10.1038/nchembio.340
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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