Research Press Release

社会科学:経済的虐待の兆候を明らかにする

Nature

2026年9月24日

Nature にオープンアクセスで掲載される英国の銀行データ分析によると、貯蓄の枯渇、負債の増加、信用スコアの低下といった経済的虐待を示す兆候は、銀行取引記録から特定できることが示された。この調査結果では、経済的虐待を受けているとみられる顧客の特定に役立つ、最大373もの経済行動の指標が明らかになった。

経済的虐待とは、加害者が被害者の金銭へのアクセスを制限したり、財務状況を悪化させたり、金銭的利益を得るために被害者を搾取したりする、家庭内暴力の一種である。英国では、推定144億ポンドの債務が経済的虐待に関連すると推定されている(この推定値は2020年の物価ベースであり、2026年の物価ベースでは187億8000万ポンドに相当する)。経済的虐待は広く見られるものの、明確な証拠が欠如しているため、刑事司法制度において見過ごされることが多い。

Anna Trendlら(ロイズ・バンキング・グループ〔英国〕)は、英国で経済的虐待を受け、その後も影響を受けながら生活している女性5428人の個人向け銀行サービスのデータを分析し、虐待が明らかになる最大7年前から発生していた373の経済的虐待の指標を特定した。具体的には、研究者らは、こうした女性のクレジットスコアが対照群より109ポイント低く、未払い債務を抱える確率が31.9パーセントポイント高いことを明らかにした。また、こうした女性では、当座貸越額や当座貸越手数料が高く、ローンの返済額も多いことが確認された。一方で、貯蓄残高は少なく、現金引き出し回数は多かった。こうした女性は、セルフケア(歯科、眼鏡店、およびスポーツなど)への支出が少なく、酒類販売店、ガソリンスタンド、および法的費用への支出が多かった。また、本研究の対象となった女性の間では、パスワードの再設定、暗証番号の再発行、および銀行カードの紛失・盗難届の頻度も高かった。

著者らは、分析対象となった集団が、経済的虐待を受け、その後も影響を受けながら生活している人々全体の代表的な特徴を必ずしも反映しているわけではないと指摘している。そのため、これらの結果をより広い集団に一般化できるかどうかについては、さらなる研究が必要であるとしている。この調査結果は、経済的虐待が長期間にわたりどのように現れるかについての知見を提供している。これは、被害者が銀行に虐待を申告するきっかけとなるような、単発的な出来事に着目する見方とは異なる。同様に、この調査結果は、こうした人々を支援するための脆弱性指標や介入戦略の作成に役立つと考えられる。

Trendl, A., Sharp-Jeffs, N., Perrier, K. et al. Banking records reveal characteristics of financial abuse. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-11049-7

doi:10.1038/s41586-026-11049-7

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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