天文学:冥王星の類似天体の周囲に薄い大気がある証拠
Nature Astronomy
2026年5月5日
冥王星よりさらに外側を公転する遠方天体の観測結果から、その天体が薄い大気に包まれている可能性が示された。この大気は、氷の火山活動によって供給されているか、あるいは彗星のような天体の衝突によって生成された可能性がある。このことを報告する論文がNature Astronomy に掲載される。本研究は、太陽系の最外縁にある比較的小さな天体であっても、少なくとも一定期間は大気を保持しうることを示唆している。
海王星の軌道より外側を公転する天体は、太陽系外縁天体(trans Neptunian objects)と呼ばれ、太陽系形成時の名残である。その中でも、大気の存在が明確に確認されているのは、準惑星の冥王星のみであった。
有松 亘ら(国立天文台)は、天体(612533)2002 XV93について、その天体が恒星の前を横切る「掩蔽(えんぺい;stellar occultation)」を観測することで研究を行った。著者らは、2024年1月、京都府および長野県にある専門の天文台に加え、福島県の市民天文学者が運用する望遠鏡を併用し、日本国内の3か所からこの現象を観測した。一部の観測では、天体が恒星の前を通過する際、光が急激に暗くなるのではなく、数秒かけて徐々に減光した。これは、周囲に薄いガス層、すなわち大気が存在する場合に予想される特徴的な挙動である。著者らは、この大気は地球の大気よりも約500万~1000万倍薄いと算出し、氷の火山から放出されるガスによって維持されている可能性、あるいは、比較的最近に起きた彗星のような天体の衝突によって放出された物質から生じた短命な大気であるかもしれないと示唆している。
この発見は、高密度の大気はより大きな惑星の周囲にのみ形成されるという従来の仮定に異を唱えるものである。大気が時間とともにどのように変化するかを確認し、その形成過程をより深く理解するためには、今後の観測、特にさらなる掩蔽現象の観測や宇宙望遠鏡を用いた測定が必要とされる。
- Article
- Published: 04 May 2026
Arimatsu, K., Yoshida, F., Hayamizu, T. et al. Detection of an atmosphere on a trans-Neptunian object beyond Pluto. Nat Astron (2026). https://doi.org/10.1038/s41550-026-02846-1
doi:10.1038/s41550-026-02846-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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