医学:血液濾過が妊娠高血圧腎症の治療法となるかもしれない
Nature Medicine
2026年4月28日
血液濾過療法により、あるタンパク質の濃度を安全に低下させ、きわめて早期かつ重篤な妊娠高血圧腎症(preeclampsia;子癇前症)に関連する高血圧を軽減できる可能性を示したパイロット研究を報告する論文が、Nature Medicine に掲載される。この結果は、動物モデルおよび少数のヒトの参加者にもとづくものである。より大規模な研究が必要ではあるものの、この発見は、この治療法が妊娠中の妊娠高血圧腎症の進行を遅らせ、早産のリスクを低減するのに役立つ可能性を示唆している。
妊娠高血圧腎症は、妊娠中に高血圧を引き起こし、母体と胎児の両方に深刻な問題をもたらす可能性がある疾患だ。しかし、現在この疾患に対する治療法は、出産以外に存在しない。妊娠高血圧腎症が進行するにつれ、sFlt 1(soluble fms‑like tyrosine kinase‑1;可溶性fms様チロシンキナーゼ1)と呼ばれる胎盤由来タンパク質のレベルが上昇し、この疾患の発症に重要な役割を果たしていると考えられている。
Ravi Thadhaniら(シダーズ・サイナイ医療センター〔米国〕)は、血液からsFlt 1を除去するために、アフェレシス(apheresis)と呼ばれる循環系濾過技術を検証した。妊娠中のヒヒを用いた試験では、1回の治療ごとにsFlt 1のレベルが約半分に低下し、3頭のうち2頭は健康な赤ちゃんを出産した。3頭目のヒヒは、治療とは無関係な出産時の合併症により死亡した。著者らは、その後、妊娠していない5名の被験者でこの手法を試験し、有害事象が認められなかったことを確認したうえで、妊娠初期の重度妊娠高血圧腎症の妊婦への治療を開始した。7名の女性が1サイクルのアフェレシスを受け、9名が数サイクルの治療を受けた。1サイクル以上受けた女性では、sFlt 1の濃度が16.7%低下し、血圧もわずかに低下した。母親と胎児の状態は治療期間中、安定していた。治療を受けた参加者の妊娠期間は、入院後中央値で10日間継続したのに対し、未治療の女性では4日間であった。また、治療に関連する副作用は軽微であった。
このパイロット研究の結果は、アフェレシスが安全で忍容性が高く、血液からsFlt-1を除去することが、母体や胎児に害を与えることなく、きわめて早期の妊娠高血圧腎症の進行を遅らせるのに役立つ可能性を示唆している。一方で、著者らはサンプルサイズが小さいことに言及し、この手法が確実に妊娠期間を延長し、臨床転帰を改善できるかどうかを評価するためには、より大規模な対照試験が必要であると強調している。
- Article
- Published: 27 April 2026
Thadhani, R., Hiemstra, T.F., Vatish, M. et al. Targeted removal of soluble Fms-like tyrosine kinase 1 in very preterm preeclampsia: a pilot trial. Nat Med (2026). https://doi.org/10.1038/s41591-026-04333-6
doi:10.1038/s41591-026-04333-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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