Research Press Release

気候科学:煤の排出が少ない航空機エンジンでも飛行機雲を減らさない

Nature

2026年4月2日

最新の「リーンバーン(lean-burn;希薄燃焼)」エンジンを搭載した旅客機からの排出物を飛行中に観測した結果によると、航空機の煤煙排出量を削減しても、飛行機雲は減らないかもしれないことを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。航空機による飛行機雲は、航空業界の気候温暖化への影響の一因となっている。この発見は、ジェットエンジンの排出物が気候に与える影響を理解し、それを低減するために、さらなる研究が必要であることを示している。

航空機の飛行機雲による気候温暖化効果は、二酸化炭素(CO2)排出によるものとほぼ同等であり、航空業界は飛行機雲の形成を抑制する戦略を模索している。飛行機雲は、エンジン排気中の粒子が水蒸気と混ざり合って凍結し、高高度に滞留する氷晶を形成することで生じる。この氷晶は、地球から放射される熱を閉じ込める可能性がある。これまで、煤粒子は飛行機雲内の氷晶数を制御する上で重要な役割を果たしていると考えられてきた。したがって、煤煙排出を削減するリーンバーンエンジンの開発は、飛行機雲による温暖化を低減する可能性を秘めているが、実際のデータは限られていた。

A321neo機(商用飛行で使用される機種)の後方で行われた飛行中の観測によると、エンジンの燃焼モード変更だけでは飛行機雲の形成を抑えるには不十分である可能性が示されたと、Christiane Voigtら(ドイツ航空宇宙センター〔ドイツ〕)によって報告された。著者らは、試験機から排出されるガスを、リーンバーン(低煤)およびリッチバーン(rich-burn;高煤)の燃焼モード、ならびに異なる燃料についてサンプリングした。煤の排出量は、リッチバーンモードに比べてリーンバーンモードでは1000倍低かったが、飛行機雲の形成に顕著な減少は見られなかった。しかし、低硫黄燃料から生成された飛行機雲は、通常の硫黄含有量の燃料から生成されたものよりも氷結晶の数が少なかった。また、超低硫黄燃料の場合、ほかの蒸気や潤滑油の放出も、飛行機雲の形成に寄与していることが明らかになった。

これらの結果は、飛行機雲の氷晶形成をどのように低減できるかについて、さらなる研究が必要であることを示唆している。ただし、今回の知見は、航空による気候への影響を抑えるために必要な、燃料組成やエンジン燃焼モードの変更に関して、一定の示唆を与えている。

シュプリンガーネイチャーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs;Sustainable Development Goals)、および当社のジャーナルや書籍で出版された関連情報やエビデンスの認知度を高めることに尽力しています。本プレスリリースで紹介する研究は、SDG 13(気候変動に具体的な対策を)に関連しています。詳細は、「SDGs and Springer Nature press releases」をご覧ください。

Voigt, C., Märkl, R., Sauer, D. et al. Substantial aircraft contrail formation at low soot emission levels. Nature 652, 112–118 (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10286-0

Nature Podcast: These scientists chased a jet to learn more about ‘lean-burn’ contrails
https://www.nature.com/articles/d41586-026-01052-3

Research Briefings: Cutting aircraft soot emissions is not enough to curb contrail clouds
https://www.nature.com/articles/d41586-026-00931-z

 

doi:10.1038/s41586-026-10286-0

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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