健康:女性は運動によってより大きな心臓の健康効果を得られるかもしれない
Nature Cardiovascular Research
2025年10月28日
推奨される運動ガイドラインに従うことで、女性は男性と比較して冠動脈性心疾患による死亡リスクを3分の1に低減できるかもしれないことを報告する論文が、Nature Cardiovascular Research にオープンアクセスで掲載される。この知見は、性別に応じた推奨事項が冠動脈性心疾患の予防および管理の向上につながる可能性を示唆している。
冠動脈性心疾患は、依然として世界的な疾病および死亡の主要な原因である。世界保健機関(WHO:World Health Organization)、アメリカ心臓協会(AHA:American Heart Association)、および欧州心臓病学会(ESC:European Society of Cardiology)の現行ガイドラインでは、すべての成人に対し、週150分以上の中強度~高強度の身体活動を推奨している。しかし、これらのガイドラインは、運動能力における「性差」の証拠があるにもかかわらず画一的なアプローチを採用しており、冠動脈性心疾患がこの性差とどう関連するかは不明であった。
Jiajin Chenら(廈門大学〔中国〕)は、85,000人以上の参加者から収集したUKバイオバンク(UK Biobank)のリストバンド型活動量計データを分析し、身体活動と冠動脈性心疾患の転帰との関連における性差を調べた。冠動脈性心疾患のない80,243名の参加者(女性45,986名、男性34,257名)において、週150分の運動というガイドライン目標を達成した女性参加者は、冠動脈性心疾患リスクが22%低下した。一方、男性参加者では17%の低下だった。さらに分析すると、女性は週250分の活動で冠動脈性心疾患リスクを30%低減できたが、男性が同等の低減を達成するには週530分が必要だった。冠動脈性心疾患を有する5,169名の参加者(女性1,553名、男性3,616名)では、ガイドライン遵守が女性の全死因死亡リスクを男性と比較して3倍大きく低減させる関連性が確認された。
この結果は、現行のガイドラインが性差を無視していること、性別に応じた対策が冠動脈性心疾患予防を改善し得ることを示唆している。これらの知見を裏付け、個別化された推奨事項を策定するためには、より多様な集団を対象とした追加研究が必要である。
- Article
- Open access
- Published: 27 October 2025
Chen, J., Wang, Y., Zhong, Z. et al. Sex differences in the association of wearable accelerometer-derived physical activity with coronary heart disease incidence and mortality. Nat Cardiovasc Res (2025). https://doi.org/10.1038/s44161-025-00732-z
News & Views: Sex differences in the association of physical activity with coronary heart disease incidence and mortality
https://www.nature.com/articles/s44161-025-00732-z
doi:10.1038/s44161-025-00732-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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