Research Press Release

気候変動:米国の都市における肉の消費がもたらすカーボンコスト

Nature Climate Change

2025年10月21日

3,531都市のデータ分析によると、米国では、年間1,100万トン以上の肉が都市部で消費されていることを報告する論文が、Nature Climate Change にオープンアクセスで掲載される。これは、3億2,900万トンの二酸化炭素排出量に相当し、米国内の化石燃料使用による排出量と同水準である。ニューヨーク、ロサンゼルス、およびシカゴの3都市だけで年間320万トンの肉を消費している。しかし、著者らは、食品廃棄物の削減や牛肉から鶏肉への食生活転換などの対策により、この排出量を最大51%削減できると示唆している。

肉および乳製品が都市部の温室効果ガス排出に大きく寄与することは知られているが、広大な農村地域にまたがる農業サプライチェーンの複雑さから、その影響を追跡するのは困難だった。従来の炭素会計手法は、多くの場合国別平均に基づいており、重要な地域差が見過ごされやすい傾向がある。

Benjamin Goldsteinら(ミシガン大学〔米国〕)は、牛肉、鶏肉、および豚肉の消費に伴う温室効果ガス排出量を定量化し、3,531の米国都市における「炭素のひづめ跡(carbon hoofprint;畜産由来の炭素フットプリント)」を算出した。高解像度モデルを用いて、食肉消費を飼料、家畜、および加工肉の生産地である特定農村地域と関連付けた。これらの都市では、年間460万トンの鶏肉、370万トンの牛肉、および270万トンの豚肉が消費されているが、そのカーボンフットプリントは主に生産地によって決定されることが判明した。肉消費による3億2,900万トンの炭素排出量は、英国(3億500万トン)とイタリア(3億1,300万トン)の年間総排出量を超え、米国の国内化石燃料燃焼量(3億3,400万トン)に匹敵する。著者らは、サプライチェーンが数千キロに及び、数百の郡を跨ぐことを明らかにした。例えば、ロサンゼルスは10郡から牛肉を調達しているが、その供給源は469郡に及ぶ畜産に依存し、飼料用作物は828郡で栽培されている。

Goldsteinらは、都市が食用の食品廃棄物を削減する戦略を実施し、牛肉から鶏肉への食生活の転換を促進することで、都市における消費による環境への影響を緩和し、炭素のひづめ跡を14~51%削減できると強調している。一方、樹木と家畜放牧を統合する(シルボパスチャー;林間放牧)などの供給側の戦略は、ネットの炭素のひづめ跡をさらに削減できるかもしれない。

Goldstein, B.P., Pelton, R.E.O., Gounaridis, D. et al. The carbon hoofprint of cities is shaped by geography and production in the livestock supply chain. Nat. Clim. Chang. (2025). https://doi.org/10.1038/s41558-025-02450-7
 

シュプリンガーネイチャーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs;Sustainable Development Goals)、および当社のジャーナルや書籍で出版された関連情報やエビデンスの認知度を高めることに尽力しています。本プレスリリースで紹介する研究は、SDG 12(つくる責任、つかう責任)に関連しています。詳細は、「SDGs and Springer Nature press releases」をご覧ください。 

doi:10.1038/s41558-025-02450-7

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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