天文学:死にゆく星がその構造を明らかにする
Nature
2025年8月21日
超新星爆発の際に星が内部構造を露わにするという稀な宇宙現象を報告する論文が、今週のNature に掲載される。この観測結果は、星の進化に関する新たな知見を提供し、星の寿命の終盤における構造に関する予測を裏づけるかもしれない。
寿命を迎えた大質量星は、さまざまな元素で構成される殻状の構造になっていると予測されており、より重い元素は中心部に近い位置に存在すると考えられている。しかし、超新星爆発によってこれらの層が混ざり合うため、これらの層を観測することは困難であった。
Steve Schulzeら(ノースウェスタン大学〔米国〕)は、2021年9月に観測した超新星(SN:supernova)2021yfjについて報告している。この母星(progenitor star)は、その外層の大部分が剥ぎ取られ、超新星爆発によって内部の星層が露わになったと考えられる。著者らは、超新星爆発直前に母星から放出された、厚くて巨大なケイ素と硫黄に富む殻を観測した。しかし同時に、より軽い元素であるヘリウムも検出され、これはこれまで超新星爆発の初期段階で失われていると考えられていたため、予想外の発見であった。このような星の内部層が露出したことは、超新星爆発の母星である大質量星における質量損失と剥ぎ取りに関する既存の理論に疑問を投げかけ、著者らは希少な新たなメカニズムが関与している可能性を示唆している。
同時掲載されるNews & Viewsで、Anya NugentとPeter Nugentは、この発見が「・・・星が理論的に予測されていた殻構造が、ケイ素と硫黄に富む層まで直接確認された」と述べている。さらに、この発見が「・・・大質量星がどのようにその生涯を終えるかに関する謎を解明する」と付け加えている。
- Article
- Published: 20 August 2025
Schulze, S., Gal-Yam, A., Dessart, L. et al. Extremely stripped supernova reveals a silicon and sulfur formation site. Nature 644, 634–639 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09375-3
doi:10.1038/s41586-025-09375-3
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