ゲノミクス:古代 DNA がカルパチア盆地の多様なコミュニティー組織を明らかにする
Nature Communications
2025年6月25日
研究者たちは、約7,000–6,000年前にカルパチア盆地(Carpathian Basin)に居住していた地理的に近いコミュニティー間で、遺伝的多様性と多様な社会構造に相反するパターンを発見した。オープンアクセスジャーナルNature Communications に掲載されるこの研究は、東中央ヨーロッパの新石器時代後期(Late Neolithic)と銅器時代初期(Early Copper Age)の人口の社会および遺伝的動態に関する新たな知見を明らかにしている。
カルパチア盆地の新石器時代(紀元前約6000–4500年)の人口史はよく研究されている。しかし、この地域に後から住んだ人々、特に銅器時代(紀元前4500–2800年)の人々については、まだ多くのことが不明である。
Anna Szécsényi-Nagyら(ハンガリー研究ネットワーク(HUN-REN)人文科学研究センター〔ハンガリー〕)は、8つの埋葬地から出土した125人の全ゲノムデータを用いて、約7,000–6,000年前にカルパチア盆地(現在のハンガリーとルーマニア)に居住していた集団の人口構造を分析した。著者らは、同じ極小規模地区に埋葬され、互いに連続して生活していた新石器時代後期と銅器時代初期の2つの集団(Polgár-CsőszhalomとTiszapolgár-Basatanya)が、新石器時代後期から銅器時代初期にかけて、より分散した集落への大きな文化的変化があったにもかかわらず、高い遺伝的連続性を示していることを発見した。この遺伝的連続性は、これらの変化が地域への新規集団の移動ではなく、集団内の文化的および社会的慣行の変化に起因するものであったと示唆している。
研究者たちはまた、100キロメートルしか離れていないにもかかわらず、同時期の銅器時代初期の2つの集団(Tiszapolgár-BasatanyaとUrziceni-Vamă)の間で、家族構造に顕著な違いがあったことを示している。今回の証拠によると、Tiszapolgár-Basatanyaのコミュニティーは結束力が強く、閉鎖的であり、より多くの血縁関係にある個体が、家族ごとにまとまって埋葬される傾向にあったことを示している。これに対し、Urziceni-Vamăのコミュニティーは遺伝的多様性が高く、他の集団との交流が活発だったことを示しており、家族単位の埋葬も空間的に分散していた可能性が示唆される。
これらの結果は、比較的近い距離に住む集団によって表される文化的および社会的関係の多様性について、さらなる洞察を提供している。
- Article
- Open access
- Published: 24 June 2025
Szécsényi-Nagy, A., Virag, C., Jakab, K. et al. Ancient DNA reveals diverse community organizations in the 5th millennium BCE Carpathian Basin. Nat Commun 16, 5318 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-025-60368-2
doi:10.1038/s41467-025-60368-2
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