コンピューターサイエンス:AIツールが創造的なビデオゲーム開発を支援
Nature
2025年2月20日
ゲームデザイナーが反復的にゲームプレイを構築するのを支援する生成型人工知能(AI:Artificial Intelligence)ツールを報告する論文が、Nature に掲載される。マイクロソフト(Microsoft)の研究者らが開発したAIモデルは、対象となるビデオゲームのメカニクスに従う頑強な3次元(3D)世界を生成した。
ビデオゲームは、エンターテイメント業界で最大のシェアを占めており、世界中で何十億もの人々がビデオゲームをプレイし、購入している。一方で、生成AI(generative AI)の人気はクリエイティブな分野で高まり続けているが、ビデオゲーム開発を支援する役割については依然として不明確なままである。
ビデオゲーム開発者のニーズを理解するために、Katja Hofmannらはクリエイティブチームに所属する27人のビデオゲーム開発者にインタビューを行った。これらの人々は、ビデオゲーム開発のための現在のAIソリューションには、多くの異なるアイデアを生み出す能力(発散的思考)が欠けていると考えていた。また、ゲームの各要素を設計プロセスを通じて継続的に微調整する必要性(反復的実践)も強調していた。著者らはその後、3Dマルチプレイヤーバトルシミュレーター「Bleeding Edge」の7年間の人間によるゲームプレイを使用してトレーニングされたAIモデル「World and Human Action Model(WHAM)」を開発した。研究者らは、WHAMがBleeding Edgeの既存のメカニクスと一致する複雑な3Dビデオゲームのシークエンスを作成でき、レベルデザインに顕著な多様性があり、クリエイターが反復的に出力を微調整できることを発見した。Hofmannらは、WHAMのデモンストレーターも開発し、ユーザーがWHAMの出力と関わり、カスタマイズするための視覚的なインターフェースとした。
著者らは、WHAMがゲームプレイのトレーニングのみで、事前知識なしにシーケンスを生成することを学習したことから、このツールは他のビデオゲームからレベルを生成するのに簡単に転用できると考えている。同様に、WHAMのようなAIツールがデザインプロセスの最終段階として機能することは考えにくく、むしろ人間のゲームデザイナーを支援するツールとして使用すべきであると指摘している。このアプローチに関する今後の研究により、WHAMがデザインプロセスのさまざまな段階においてクリエイティブなチーム内でどのように活用できるかについて分析するのに役立つかもしれない。
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- Published: 19 February 2025
Kanervisto, A., Bignell, D., Wen, L.Y. et al. World and Human Action Models towards gameplay ideation. Nature 638, 656–663 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-08600-3
doi:10.1038/s41586-025-08600-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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