気候:2026年ワールドカップの開催地は、サッカー選手に熱ストレスのリスクをもたらす
Scientific Reports
2024年11月29日
2026年のFIFA男子ワールドカップに出場するサッカー選手は、深刻な熱ストレスや脱水症状のリスクにさらされる可能性があることを報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。北米で開催予定のワールドカップの16会場のうち10会場では、選手たちが極度の熱ストレスにさらされるリスクがあり、最もリスクの高い会場は、米国テキサス州のアーリントンとヒューストン、そしてメキシコのモンテレーである。
過去のワールドカップ会場に関する研究では、高い相対湿度(ブラジル、2014年)や高い気温(ロシア、2018年)の中でプレーするサッカー選手への悪影響が指摘されている。2026年のワールドカップは、北米の夏場の気温がピークに近づく6月11日から7月19日にかけて、カナダ、メキシコ、および米国で開催される。
Marek Konefałらは、コペルニクス気候変動サービス(Copernicus Climate Change Service)から得たデータを使用して、開催国のワールドカップスタジアム近辺の気温を分析した。著者らは、7月の平均気温として、16の各観測地点で観測された気温、風、および湿度を模倣した基準環境を作り出した。サッカー選手が試合中に経験するピッチの状態をシミュレートするために、数値は、人間の体が屋外環境にどのように反応するかを測定するユニバーサル・サーマル・クライメート・インデックス(UTCI:Universal Thermal Climate Index)に合わせて調整された。
アーリントン、ヒューストン(米国)、およびモンテレー(メキシコ)のスタジアムでは、1時間当たりの平均UTCI値が49.5℃を超えることが示され、極度の熱ストレスのリスクが高いことが分かった。熱ストレスが最も高くなるのは、マイアミ(フロリダ州)を除き、いずれのスタジアムでも現地時間午後2時から5時の間と推定された。マイアミでは、UTCI値が最も高くなるのは午前11時から正午の間であった。50℃を超える気温(極度の暑さとして分類される)が、アーリントンとヒューストンでは午後中盤から後半にかけて記録された。
このデータセットでは、スタジアムには空調設備がないと仮定している。空調設備があれば、水分損失や熱ストレスのレベルが低下する可能性がある。著者らは、熱ストレスが極度に高い会場での試合スケジュールを調整し、サッカー選手が潜在的に危険なプレー環境にさらされないようにすることを推奨している。
- Article
- Open access
- Published: 28 November 2024
Lindner-Cendrowska, K., Leziak, K., Bröde, P. et al. Prospective heat stress risk assessment for professional soccer players in the context of the 2026 FIFA World Cup. Sci Rep 14, 26976 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-77540-1
doi:10.1038/s41598-024-77540-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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