生態学:リュウキュウアオイが太陽光を共有する
Nature Communications
2024年11月20日
リュウキュウアオイは光ファイバーケーブルの束に似た構造に進化していることを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。この「窓のような」構造は、有害な紫外線を遮断しながら、太陽光を貝殻内部に共生する藻類に導くもので、生物における光ファイバーケーブルの束に匹敵する構造の初めての観察例となるかもしれない。
リュウキュウアオイ(ハート形の軟体動物)とオオジャコガイは、二枚貝(軟体動物の一種で、殻が蝶番でつながっているもの)であり、どちらも殻の内側に生息する藻類と相互に有益な関係を築いて進化した。藻類は、光合成を行うために太陽光を必要とし、二枚貝に栄養分を与える。オオジャコガイが貝殻を開いて光を取り入れると、軟らかい内側が捕食や太陽からの紫外線にさらされることになる。しかし、リュウキュウアオイは貝殻を閉じたまま、共生藻類への光のアクセスを別のメカニズムで制御しているが、その詳細は明らかになっていない。
Dakota McCoyらは、リュウキュウアオイの殻の断片を分析し、異なる波長の光の強度を測定する機器を用いて、殻の太陽に面した側からどれだけの光が透過するかを測定した。透明な殻の窓はアラレ石(炭酸カルシウムの結晶形)と呼ばれる物質でできており、光を殻の内側のマイクロレンズに集光し、拡散、凝縮、およびろ過することが分かった。これにより、藻類が利用できる光の量を最適化しながら、有害な紫外線への暴露を低減することができる。このリュウキュウアオイの窓が光を透過する能力により、著者らはこの構造を光ファイバーケーブルの束に例えている。
リュウキュウアオイの窓のユニークな構造は、生物そのものに多くの利点をもたらす可能性があり、また、効率的な光透過のための自然な適応を模倣する新しい生体材料の開発を促すかもしれない。
- Article Open access Published: 19 November 2024
McCoy, D.E., Burns, D.H., Klopfer, E. et al. Heart cockle shells transmit sunlight to photosymbiotic algae using bundled fiber optic cables and condensing lenses. Nat Commun 15, 9445 (2024). https://doi.org/10.1038/s41467-024-53110-x
doi:10.1038/s41467-024-53110-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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