老化:人間の平均寿命の延伸が鈍化している
Nature Aging
2024年10月8日
過去30年間の世界9地域のデータ分析によると、人間の平均寿命の延伸は鈍化している可能性があることを報告する論文が、Nature Agingに掲載される。この調査結果は、社会、医療、および経済政策に重要な影響を及ぼすと、著者らは示唆している。
20世紀には、公衆衛生と医療の改善により、長寿人口の平均寿命は、10年あたり約3年ずつ延びていた。しかし、今世紀における平均寿命の推移を予測することは、議論の的となっている。1990年代のいくつかの予測の中には、長寿人口は平均寿命の上限に近づいているというものもあったが、一方で21世紀に誕生するほとんどの子供たちが100歳以上まで生きると予測するものもあった。
S. Jay Olshanskyらは、1990年から2019年の米国と比較するために、現在の平均寿命が最も長い9つの地域(香港、日本、韓国、オーストラリア、フランス、イタリア、スイス、スウェーデン、およびスペイン)の死亡率データを分析した。その結果、世界中で平均寿命の延伸が鈍化し、米国では著しく低下していることが判明した。
20世紀に観察された平均寿命の延伸率は加速していたが、特に2010年以降は減速しており、近年生まれた子供たちが100歳まで生きる可能性は比較的低くなっている(女性では5.3%、男性では1.8%)。2019年に生まれた子供が、100歳まで生き延びる確率が最も高い国は香港で、生涯に100歳まで生きる女性の割合は12.8%、男性は4.4%と予測されている。米国では、2019年に生まれたコホートで100歳まで生きると予想される割合は、女性で3.1%、男性で1.3%である。
Olshanskyらは、21世紀に急激な寿命延長がすでに起こっている、あるいは起こるという証拠はないと示唆し、もし起こるとすれば、退職計画や生命保険の価格設定など、広範囲にわたる制度の変更が必要になるだろうと指摘している。
Olshansky, S.J., Willcox, B.J., Demetrius, L. et al. Implausibility of radical life extension in humans in the twenty-first century. Nat Aging (2024). https://doi.org/10.1038/s43587-024-00702-3
doi:10.1038/s43587-024-00702-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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