健康:孤独と疾病の関連性を再評価する
Nature Human Behaviour
2024年9月17日
孤独は直接的な疾病の原因ではないかもしれないと、40万人以上の参加者を対象とした遺伝学的研究を報告する論文が、Nature Human Behaviourに掲載される。しかし、この調査結果は、孤独に関連するリスク要因を管理することで、長期的な健康状態を改善できる可能性を示唆している。
孤独感とは、社会から疎外されているという主観的な感情であり、うつ病、糖尿病、および心血管疾患など、数多くの健康問題と関連している。この関連性を理解することは、効果的な介入策を開発する上で重要である。これまでの研究ではいくつかの関連性が報告されているが、ほとんどの疾病については、これらの関連性と潜在的な因果関係は立証されていない。
Jihui Zhangらは、英国バイオバンクの476,100人の参加者のデータを、平均12.2年の追跡期間にわたって分析した。観察分析では、14のカテゴリーにわたる56の疾病と孤独感との関連性を調査した。観察結果から、孤独感は14の疾病分類中13の疾病と、56の疾病中30の疾病において、リスクの増加と関連している可能性が高いことが示された。孤独と最も強く関連している病気は、心的外傷後ストレス障害、うつ病、不安、統合失調症、および慢性閉塞性肺疾患(COPD;chronic obstructive pulmonary disease)であった。孤独と関連している30の疾病のうち、26の疾病については遺伝子データが入手可能であったため、さらに分析を行った。これらの遺伝子分析の結果、26の疾病のうち20の疾病については、孤独との関連性は因果関係ではないことが示された。これには、心血管疾患、2型糖尿病、および慢性肝疾患などが含まれる。著者らは、これは孤独が代理マーカーであることを示唆しており、孤独がこれらの疾病の直接的な原因であるというよりも、むしろ患者におけるこれらの疾病を予測できるかもしれないと提案している。
これらの知見は、健康状態を改善するために、不健康な行動や併存疾患など、孤独に関連するリスク要因に取り組むことの重要性を示している。著者らは、孤独と疾病を結びつけるメカニズムを解明するには、より多様な参加者を対象とした研究が必要であると付け加えている。
Liang, Y.Y., Zhou, M., He, Y. et al. Observational and genetic evidence disagree on the association between loneliness and risk of multiple diseases. Nat Hum Behav (2024). https://doi.org/10.1038/s41562-024-01970-0
doi:10.1038/s41562-024-01970-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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