発生生物学:マウスにおいて若い卵胞が老化した卵母細胞の発育を助けるかもしれない
Nature Aging
2024年9月10日
老化したマウスの卵母細胞を若いマウスの卵胞に移植すると、発育能力が向上する可能性を報告する論文が、Nature Agingに掲載される。この研究は、卵巣の老化における卵胞内の微小環境の重要性を取り上げている。
卵母細胞(未発育な卵細胞)は、卵胞と呼ばれる体細胞の包みの中で成長および発育する。卵胞細胞は、卵母細胞と直接接触し、卵母細胞の発育に重要な栄養素とサポートを提供する。加齢に伴い、卵母細胞は量も質も低下する。生殖補助医療技術(ART = assisted reproductive technology)(若い卵母細胞の凍結保存など)は有用であるが、老化した卵母細胞の発育能力を回復させる臨床的に実行可能な戦略はない。
Rong Liらは、3D再構成キメラ卵胞と呼ばれる培養系を開発することにより、マウスモデルにおける卵胞内の微小環境の卵胞細胞老化への寄与を評価した。著者らは、老化した卵母細胞を、自身の卵母細胞を除去した若いマウスのレシピエント卵胞に移植し、自然なコミュニケーションが回復するかどうかを調べた。その結果、老化したマウスの卵母細胞を若いマウスの卵胞内で培養すると、発育能力が向上することがわかった。若い卵胞内で培養された老化した卵母細胞は、体細胞との相互作用が強化され、ミトコンドリア機能が改善され、そして卵母細胞発育中の染色体分離が改善された。
この研究は、卵母細胞の老化における卵胞の重要な役割を明らかにし、卵母細胞の老化のある側面が可逆的であることの概念実証を提供するものである。これにより、老化した卵母細胞の発育能力を向上させ、加齢に関連する不妊治療に役立つ可能性がある。著者らは、これらの知見をヒトに適用できるかどうかを評価するためには、さらなる研究が必要であると結論づけている。
Wang, H., Huang, Z., Shen, X. et al. Rejuvenation of aged oocyte through exposure to young follicular microenvironment. Nat Aging (2024). https://doi.org/10.1038/s43587-024-00697-x
doi:10.1038/s43587-024-00697-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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