気候変動:北極海の沿岸浸食により、CO2吸収量が予測より少ない可能性
Nature Climate Change
2024年8月13日
海岸浸食の増加により、北極海の二酸化炭素吸収能力が低下している可能性を示すモデル化研究を報告する論文が、Nature Climate Change に掲載される。著者らは、2100年までの永久凍土侵食による大気中の二酸化炭素の年間増加量は、2021年のヨーロッパの自動車排出量の約10%に相当すると予測している。
北極圏は、人間による活動の結果、気候変動に対して特に敏感であることが知られており、地球上の他の地域よりも約4倍の速さで温暖化している。気温の上昇は、北極圏の永久凍土(一年中凍結している地盤)の融解を促進し、同地域の海岸浸食を加速させ、2100年までに、この浸食は2-3倍に増加すると予測されている。この浸食は、陸地から北極海への有機物の供給を増加させるが、これが水柱の生物学的および化学的プロセスに及ぼす影響は不明である。
David Nielsenらは、地球システムモデルを用いて、炭素と栄養素のレベルの増加が北極海の将来の季節的な二酸化炭素循環にどのような影響を与えるかを検証した。その結果、これまでの気候モデリングが沿岸侵食の影響を最も受ける地域を含まなかったため、大気中の二酸化炭素を北極海が吸収する量を誤って評価していた可能性があることを発見した。侵食の影響を受けるこれらの地域は、炭素を吸収するよりも多く放出している。これは、浸食された有機物が細菌によって迅速に代謝され、二酸化炭素を放出するためで、これにより水の表面酸性度が上昇し、大気中の二酸化炭素を吸収しにくくなる。
この浸食によって、2100年までに大気からの二酸化炭素の吸収量が最大で年間132億キログラム減少すると予測されており、これは北極海内部の吸収量の約7-14%に相当する。Nielsenらはまた、沿岸部の永久凍土の侵食が気候に正のフィードバックループをもたらし、地球の気温が1℃上昇するごとに、大気中の二酸化炭素を年間10億-20億キログラム増加させると予測している。
Nielsen, D.M., Chegini, F., Maerz, J. et al. Reduced Arctic Ocean CO2 uptake due to coastal permafrost erosion. Nat. Clim. Chang. (2024).
doi:10.1038/s41558-024-02074-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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