気候変動:極端な山火事が過去20年で倍増
Nature Ecology & Evolution
2024年6月25日
極端な山火事の発生頻度と規模は過去20年で倍増したとみられ、こうした事象が最も苛烈だった年の上位6年は2017年以降に生じていたことを報告する論文が、Nature Ecology & Evolutionに掲載される。
近年、激しい山火事が起こっては記録を更新し、世界で大きく報じられている。こうした火災では、人命、財産、家畜、野生生物とそれらの生息場所が失われ、何十億ドルもの損害が生じる。さらに、山火事に関連する大気汚染は、何千人もの死の原因となっている。しかし、この種の火災の傾向はあまり明らかにされていない。
今回、Calum Cunninghamらは、山火事が頻発化・大規模化しているかどうか調べるため、2003~2023年の衛星データを用いて火災発生のホットスポットを特定し、単一の時点や地点ではなく、総体的な火災事象の強度を算出した。その結果、極端な勢力の山火事は、発生頻度と規模が過去20年で2倍以上になり、最も苛烈だった年の上位6年はいずれも2017年以降だったことが明らかになった。また、極端な事象による被害が最も大きかったのは、新北区(北米大陸のメキシコ中部以北とグリーンランド)とオーストラレーシア/オセアニアであり、極端な事象の増加は主に、北米やロシアなどの温帯針葉樹林や北方林での火災の激甚化によって生じたことが判明したこのことは、こうした森林が近年、気候変動によって乾燥化していることに関連している可能性があるとCunninghamらは示唆している。
Cunninghamらは結論として、今回の知見から、極端な山火事が頻発化・大規模化したことで、こうした事象を生じやすい気候に適応する必要性が浮き彫りになったことが明示されたと述べている。
doi:10.1038/s41559-024-02452-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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