進化学:バオバブの系譜をたどる
Nature
2024年5月16日
バオバブの現存種全てのゲノム解析の結果、バオバブの起源の中心はマダガスカルが最有力と考えられることを報告する論文が、Natureに掲載される。この知見は、バオバブの進化の歴史と、変化する地球上でバオバブの保護戦略をどのように策定するかを洞察するための手掛かりになる。
アフリカの象徴的な樹木であるバオバブ(バオバブ属)は、マダガスカル語で「森の母」という意味で、「逆さまの木」、「命の木」としても知られている。バオバブは、形態学的に異なる8種が現存しており、そのうちの1種がアフリカに広く分布し、もう1種はオーストラリア北西部に分布し、他の6種がマダガスカルの固有種となっている。しかし、化石証拠がないため、バオバブの起源については長い間論争が続いている。
今回、Qing-Feng Wang、Tao Wanらは、全8種のバオバブのゲノム解析を実施し、この解析データセットを生態学的解析と組み合わせた。これらの解析から、バオバブ属のステム系統が約4100万年前に出現し、約2000万年前に多様化したことが判明した。著者らは、バオバブの過去の個体群動態が、種間競争とマダガスカルの地質学的変化(特に海水準の変化)に密接に関連していることを明らかにした。著者らは、さまざまなバオバブ種の系統関係、遺伝子流動、遺伝的多様性などのデータに基づいて、バオバブの起源の中心をマダガスカルとする仮説が、アフリカ本土説やオーストラリア説と比べて、現存するデータを最も合理的に説明できるという見解を示している。
今回の知見はまた、バオバブの保護戦略と保護状況の再評価を可能にした。例えば、著者らは、絶滅の危機に瀕しているマダガスカル固有種のバオバブ2種(A. suarezensisとA. grandidieri)について、今よりも保護レベルを高めるべきだと提案している。高レベルの同系交配、低い遺伝的多様性、個体群サイズの縮小のいずれもが、こうしたバオバブの絶滅危惧種が生態系のかく乱に対するレジリエンスを持っておらず、気候変動の深刻な脅威にさらされる可能性があることを示唆している。
doi:10.1038/s41586-024-07302-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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