Research Press Release

生物学:人為起源の地球規模の変化が感染症伝播リスクに影響を及ぼしている

Nature

2024年5月9日

ヒトの活動がもたらした結果である生物多様性の減少、気候変動、化学汚染、外来種の侵入はいずれも、感染症伝播の増加につながっている可能性があることを報告する論文が、Natureに掲載される。この知見は、疾病管理戦略を向上させ、疾病を増加させるような地球規模の変化をもたらす要因を監視する活動を改善するのに役立つ可能性がある。

ヒトは、新興感染症の増加に寄与していることが知られており、新興感染症は、社会経済的要因、環境要因、生態学的要因に関連している。これまでの研究から、感染症リスクは多くの因子によって変動することが明らかになっているが、地球規模の変化をもたらす要因のうちのどれが感染症リスクを最も増大させるのか、また、どのような状況下で感染症リスクが最も増大するのかは、まだ解明されていない。

今回、Jason Rohrらは、宿主(植物、動物、ヒトを含む)と寄生者の組み合わせ(合計1497通り)について、地球規模の変化をもたらす要因に対する感染症の応答に関する既存の観察結果(約3000例)を検討した。その結果、生物多様性の減少、化学汚染、気候変動、および外来種の侵入が、感染症伝播を最も大きく増加させたことが分かった。生物多様性の減少による感染症の増加は、自然の生物多様性の勾配(例えば種数の緯度勾配や高度勾配)による感染症の増加と比べて857%大きく、化学汚染よりも393%、気候変動よりも111%、外来種の侵入よりも65%大きかった。これに対して、都市化は、感染症伝播の減少に関連していた。Rohrらは、この減少の原因として、水道、衛生設備、ヒトの衛生状態の改善に加えて、数多くの寄生者(細菌、ウイルスなど)とそれらのヒト以外の宿主の生息域の減少が考えられるとしている。この結果は、ヒトの疾患とヒト以外の動物の疾患を通じて一貫していた。

今回の知見は、感染症管理を改善し、感染症を増加させるような地球規模の変化をもたらす要因のサーベイランスを向上させるのに役立つ可能性がある。具体的には、温室効果ガスの排出を削減し、生態系の健全性を管理し、外来種の侵入と生物多様性の減少を防止することが、特に健康状態を決定する社会的・経済的要因の改善と組み合わせた場合に、植物、動物、ヒトの疾患の負荷を軽減する上で役立つ可能性がある。

doi:10.1038/s41586-024-07380-6

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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