遺伝学:鳥の歌のリズムを調べる
Nature Communications
2024年4月24日
鳥の歌のリズムとテンポに関連する遺伝子について報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。著者らは、ヒトの発声にも影響を及ぼすことが知られている2つの遺伝子(ニューレキシン-1とコエンザイムQ8A)によって、鳥類の発声リズムが形成されている可能性があるという考えを示している。
鳥の歌には、それぞれの個体が習得した特徴が含まれているが、歌のリズムは、鳥類の大部分の種において生来の形質だと考えられており、性選択や種の識別に重要な役割を果たしている。しかし、歌のリズムの遺伝的基盤についてはほとんど分かっていない。
今回、Matteo Sebastianelliらは、エスワティニ王国と南アフリカ共和国の両国内でキビタイヒメゴシキドリとアカビタイヒメゴシキドリの交雑が起こっている地域(交雑帯)において、これらの鳥の歌のリズムを測定した。また、Sebastianelliらは、135羽のヒメゴシキドリの全ゲノム解析を行い、これらの鳥の発声リズムに関連する2つの遺伝子(ニューレキシン-1とコエンザイムQ8A)を発見した。これらの遺伝子は、ヒトの言語機能障害とも広く関連している。さらに、研究対象となった交雑帯では、アカビタイヒメゴシキドリの歌の方が、テンポが速く、より安定しているという観察結果が得られた。このことは、歌のリズムが生殖隔離において何らかの役割を果たしており、アカビタイヒメゴシキドリの雌はこのことを利用して自分と同じ種の配偶者を選び、キビタイヒメゴシキドリとの交雑を回避している可能性があることを示唆している。
doi:10.1038/s41467-024-47305-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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